福岡高等裁判所宮崎支部 昭和28年(う)602号 判決
被告人が昭和二七年七月二八日公安委員会の許可を受けず肩書居宅において原判示の日本刀各一振を所持していたことは原判決挙示の証拠によりこれを認めることができるところ右の所持が銃砲刀剣類等所持取締令にいわゆる不法所持となるか否かについて記録により調査すると原判決に示した証拠並びに被告人の司法警察員に対する供述調書、同検察官に対する供述調書を綜合すると本件日本刀は被告人の養父四郎八が存命中天井裏に隠匿していたものを被告人は昭和二十七年七月二十四日頃偶然これを発見したものであつてその二三日後居村役場吏員立元ナツ子にその発見届を托して山田村長宛届出の手続をなしたことが認められる。およそ刀剣類を所持するについては狩猟等の用送に供するためその住所地を管轄する公安委員会の許可を受ける場合の外美術品若しくは骨とう品として文化財保護委員会に登録しなければならないのであるから本件の場合において被告人は右日本刀を発見した後すみやかにその旨をもよりの警察署に届出た上更に文化財保護委員会にその登録手続をとらなければならなかつたのである。しかるに被告人は前記のとおりその発見届を居村々長宛提出すべく立元ナソ子にこれを托したのであるが前記証拠による被告人は前田巡査の指示を受けて適式な発見届並びに登録の手続をなすため必要な書類を入手するため時日を経過するうち本件の取調を受け起訴せられたものであることが認められるところかように適式の発見届並びに美術品若しくは骨とう品として文化財保護委員会に登録の手続をなす意思を有し且つその準備をしている間に刀剣類を所持していることはこれを不法の目的に使用しようとする意思ある場合、又は到底登録が許容せられないことを予め知り得る場合等を除く外銃砲刀剣類等所持取締令にいわゆる不法所持と目することはできないものというべきである。しかして被告人が本件日本刀を所持していた経緯は前説示のとおりであるから被告人の行為は犯罪を構成しないものというべきであつてこれにつき有罪の認定をした原判決は事実を誤認したものであり右の誤認は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから論旨は理由があり原判決は破棄を免れない。
(後略)